石堂橋 白つぐ 公式サイト

一汁三菜 /

第一器 青森県弘前市 津軽塗



平成25年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され世界中からますます注目されるようになりました。その登録に値する特徴とは四季があり、それに合わせた行事・食材・調理法。そして料理だけでなく大事な要素。季節の移ろいを表現した見た目の美しさです。
和食にとって大事なこの要素を支えてくれるのが器。和食が世界に通用する料理である理由に素晴らしい伝統工芸食器の存在が必要不可欠だと思います。白つぐでも今までたくさんの作家さん・職人さんにお会いし、お世話になってきましたが2020年よりそのエリアを日本全国に広げ、現地に行き、その土地を感じ、作り手さんの思いと作品を受け取りに出掛けて行きたいと思います。
器をお願いしてから皆様にお出しするまでの物語をここでお伝えしていきます。


2020年2月某日
伊丹を経由し青森空港へ向かいます。この日は晴天!初の東京以北の上空景色は未知の世界。今年は暖冬の為、雪はまばらですが着陸前20分にもなるとさすがに雪景色。雄大な山々。九州とはまた違う自然の様子に改めて感じます。


さて青森空港に着きまして、まずはバスで1時間ほどかけて弘前市内へ。
ちょうどお昼の時間でしたのでまずは腹ごしらえ。弘前駅から1駅行った撫牛子で降り、徒歩5分「たかはし中華そば店」さんへ。


津軽ラーメンの特徴、煮干しだしスープに自家製の太めのモチモチ麺。スープの色が濃いですが、お味はさっぱりコクがあるタイプです。醤油が九州と違うからか初めて食べるラーメンの味でした。美味しいです。人気店で次から次へとお客様が。楽しみました。

帰りも電車で・・・と思ったのですが、お昼のその時間帯は電車が走ってませんでした。これも環境の違いですね。明るい時間は電車が走っているという九州人の思い込み。お恥ずかし!でもこの景色で癒されました。記念写真。


それでは津軽塗に戻りまして大将のお目当ての津軽塗作家さんの器を取り扱ってらっしゃる「和雑貨 与志む良」さんへ。初めて伺うにも関わらず丁寧に津軽塗のご説明をしていただきました。

しかもご親切なことにお目当ての作家さん「松山漆工房」まで連れて行ってくださるとのこと。お忙しいだろうに図々しくお願いしまして、いざ工房へ。
まずは漆から


この漆に顔料を混ぜ黒や朱や柿色が生まれます。空気に触れるとすぐに色が濃い茶色に変色します。(この写真をとっている間にも表面が濃い茶色になるくらいです。生き物みたいです)
和食でも工芸でもそうですが元来使っていた材料がどんどん手に入らなくなっているということ。漆も漆を塗る木地も今まで使用していたものと違ってくることはしょうがない事です。ただそれに関しても松山さんはご自分が使われる一つ一つの材料について津軽塗師としての知識と科学的な知識を交えて説明してくださいました。津軽塗という素晴らしい工芸がずっと続いて残っている事の理由がよくわかりました。プロフェッショナルです。

津軽塗は約360年の歴史を持ち津軽独自のきゅう漆法(漆の塗り方)を生み出したのが始まりとされています。
幾重にも塗り重ねた漆を平滑に研ぎ出して模様を出すという『研ぎ出し変わり塗り」。その中にも4種の塗り方があり



唐塗(からぬり)
斑点模様をつけ(下写真。この穴の開いた木べらのような道具で斑点をつける)、塗り重ねと研ぎ出しを重ねた技法。


七々子塗(ななこぬり)
菜種蒔きつけ、乾いたら菜種をはいで小さなドットの模様をつける。塗り重ねと研ぎ出しを重ねた技法。



紋紗塗(もんしゃぬり)
黒漆の模様の入ったところにもみ殻炭の粉をふり研ぎ出し、地は艶消しの黒、模様は黒漆に仕上げる技法。


錦塗(にしきぬり)
七々子塗の地にさらに唐草などの模様を入れ、全体を金色に仕上げた技法。


塗った漆を乾かす室(むろ)。塗る時間はわずかで乾かすのが大半の時間を要するとのこと。
なのでこの室の大きさでできる仕事の品と量が決まるそうです。松山さんの室はかなり大きいそうで押入れの1.5倍はありそうです。(なので写真上段には大きなテーブルの天板、中段にはお椀やお箸などありとあらゆる漆製品が入ってます)
湿度と温度が重要。


ひと通りご説明を受けてやはり注文は七々子塗に決定。
木地を決め、色を決め、個数を決め。じっくり触って。


最後は3人でパシャり。左が七々子塗の恩人「吉村さん」右が松山漆工房の松山継道(つぐみち)さん。お名前につぐが入ると勝手に親近感が湧いてしまいます。
お二人の津軽弁を聞いていると初めてお会いする方ですがほっとしました。津軽塗という伝統を守って、人に伝え、またそれを受け継ぐ人がいる。こういうお人柄の人達だからこそしっかり守ってこられた物なのだろうと感じました。


2日目は1日目に幸運を使い切ったのか猛吹雪。強風と雪にたじろいでいるのは私達だけ。町の皆さんは全く普通。慣れてらっしゃる。
そんな中、たどり着いたのが大将の修行時代の先輩のお寿司屋さん「常寿し」さん。お父さんとお二人でカウンターに立たれ、
次々と常連さんで埋まっていく店内にお寿司が運ばれていきます。
地元の方に愛されている活気のある店内で美味しくいただきました。
先輩の原田さんと一緒に。


その後はシードル工房に向かうも吹雪に負け、そのまま引き返し・・・。ただただ時間を潰し、何とか予定通り福岡に戻ることができました。

松山さん、吉村さん、原田さん本当にお世話になりました。ありがとうございました!

器ができましたらまた続きを。